建物の解体やリフォームを検討する際、見落としがちなのが「シーリング材(コーキング材)」のアスベスト含有リスクです。
サッシ廻りや外壁目地などに使用されているこの材料には、かつて耐久性や施工性を高める目的でアスベストが配合されていました。
シーリング材は成形板などとは異なり、補修による「打ち替え」、「増し打ち」が発生しやすい建材であるため、調査には専門的な知識が必要です。
本記事では、シーリング材のアスベストに関する基礎知識から、実務で求められる正しい確認手順について詳しく解説します。
要約
- シーリング材は、「石綿含有成形板等(レベル3)」に分類される
- 平成18年(2006年)9月以前に製造・使用されたシーリング材にはアスベスト含有の可能性がある
- シーリング材は古い材料が奥に残っている場合があるため、現地調査では全層を採取することが重要

1 シーリング材(コーキング材)とは?種類と建築物への利用状況
シーリング材とは、建物の部材同士の継ぎ目や隙間に使用される充填剤のことです。施工後は時間の経過とともに硬化し、ゴム状の弾性体となることで、建物の気密性や防水性を維持する重要な役割を担っています。
1-1建物の防水性・気密性を担うシーリング材の役割
シーリング材の最大の役割は、水や空気の侵入を防ぐ「防水・気密」の確保です。
また、地震や風、温度変化によって建物が動いた(ゆがみや震え)際、その動きを柔軟に吸収することで、建具や外壁材などの破損を防ぐ「緩衝材」としての機能も持っています。
1-2建築物における主な施工箇所(外壁目地、サッシ廻り、屋上防水等)
シーリング材は、建物の外装や内装の、隙間があるあらゆる箇所に使用されています。主な施工箇所は以下の通りです。
- 外壁の目地(めじ): コンクリートパネルやALCパネル、サイディングボードの継ぎ目。
- 建具(サッシ)廻り: 窓枠やドア枠周辺。
- 屋上・バルコニー: 防水シートの端部固定や、ドレン(排水口)周辺の止水。
- 内装の継ぎ目: 室内タイルの目地や、キッチン・浴室などの水回り。
1-3シーリング材の主な種類(硬化機構による4つの分類)
シーリング材は、施工後にどのような仕組みで固まるかという「硬化機構」によって、大きく以下の4つの型に分類されます。それぞれの特徴と、代表的な成分について解説します。
- 湿気硬化型
空気中の水分(湿気)と反応して硬化するタイプです。あらかじめ容器に詰められた「1成分形」として供給され、表面から内部へと硬化が進行します。- 特徴: 手軽に施工できますが、硬化速度は温度や湿度の影響を受けます。厚みがある箇所では内部まで固まるのに時間を要します。
- 混合反応硬化型
「基剤」と「硬化剤」の2つの材料を現場で混ぜ合わせる「2成分系」の反応機構で、化学反応を起こして固まるタイプです。- 特徴: 厚みに関わらず全体がほぼ均一に硬化するため、大規模建築の深い目地などに適しています。硬化速度は主に温度の影響を受けます。
- 乾燥硬化型
材料に含まれる水分や溶剤が、大気中に蒸発(揮発)することで硬化するタイプです。- 特徴: 水分等が抜けることで、硬化後に体積が収縮する性質があります。主に内装の下地調整や隙間埋めに使われます。
- 非硬化型
施工後に表面に皮膜は形成されますが、内部は完全には固まらず、柔軟な状態を維持するタイプです。- 特徴: 1950年代〜80年代頃に主流だった「油性コーキング材」がこの代表例です。時間が経過しても内部が柔らかいまま保持されるのが特徴です。

図 シーリング材の分類
(出典:日本シーリング材工業会「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」)
2 シーリング材のアスベストとは?発じん性と規制レベル
シーリング材に配合されたアスベストは、材料の中で樹脂やセメント等と混ぜ合わされ、硬化している状態にあります。そのため、通常の生活環境においてアスベスト繊維が飛散するリスクは極めて低いとされています。
しかし、解体・改修工事に際しては、その取り扱い方法によって飛散リスクが大きく変化するため、法令に則った除去作業が必要になります。
アスベスト含有シーリング材は「石綿含有成形板等(レベル3)」に該当
アスベスト含有建材は、発じん性に応じて「レベル1」から「レベル3」に区分されます。
シーリング材は、このうち発じん性が比較的低いとされる「レベル3(石綿含有成形板等)」に分類されます(レベルについては法令による規定や通知等による解釈が示されているものではなく、便宜的な分類であることに留意する必要があります)。
シーリング材は、アスベストが強固に固着されているため、「非飛散性石綿含有建材」とも呼ばれます。しかし、以下の点に注意が必要です。
- 通常時: ゴム状または硬化した状態で固定されており、飛散の恐れは低い。
- 解体・改修時: 除去や打ち替えといった作業を行うと、材料が破壊される過程でアスベスト繊維が空気中に放出される恐れがあります。

3 アスベスト含有シーリング材を正しく確認する手順
3-1 書面による確認
まずは、設計図書(図面や仕様書)などの資料を確認します。
- 建築時期(着工日)の特定: シーリング材については、2006年(平成18年)9月1日以降に着工した建物であれば、アスベスト含有の恐れはないと判断できます。それ以前の建物の場合は、含有の可能性があるものとして調査を進めます。
- データベースを用いた製品照合: 図面からシーリング材の商品名やメーカー名が判明した場合は、厚生労働省・経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で照合し、過去の含有実績を確認します。ただし、データベースに掲載されていないからといって、アスベスト非含有の根拠にはならない点には注意が必要です。
3-2 現地での確認
書面で判明しなかった箇所や、設計図書通りの施工がなされているかを現場で直接確認します。
- 目視調査: サッシ回りや外壁目地など、施工箇所を網羅的に把握します。
- 改修履歴の確認: シーリング材はメンテナンスで「打ち替え」や「増し打ち(重ね塗り)」が行われることが多い建材です。新しいシーリング材の奥に、アスベストを含有した古い材料が残っている「多層構造」になっていないかを確認します。
3-3 分析による確認
書面や現地調査で「含有なし」と断定できない場合は、検体を採取して専門機関による分析調査を行います。
シーリング材のサンプリングでは、表面だけではなく下地に近い最深部まで含めた「全層」を採取することが不可欠です。古い材料が残っていた場合それを見逃すと、誤った分析結果に陥るリスクがあるためです。
「分析調査」では、試験室に搬入されたシーリング材をJIS A 1481-1(偏光顕微鏡法)による層別分析を行い、どの層にアスベストが含有しているかを特定します。
4 解体・リフォーム工事における事前調査の義務と報告
大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、建築物の解体・改修工事を行う際は、工事の規模に関わらず、事前調査の実施が原則として義務付けられています。
事前調査の具体的な手順や報告方法の詳細については、以下の記事でまとめていますのでご参考ください。
参考記事


5 まとめ|アスベスト調査は有資格者への依頼が安心・安全
シーリング材は、建物のあらゆる隙間に使用されている身近な材料ですが、アスベスト調査には建材の種類や使用状況、建物用途、施工年などに応じた特有の難しさがあります。
特に、過去の改修工事によって古い建材が残ったままのケースや、設計図書等が存在しないケースでは、豊富な経験を持つ有資格者による精度の高い現地調査と分析が欠かせません。
適切な調査を怠り、工事着手後にアスベスト含有建材が見つかった場合、工事の中断や是正処置、さらには法的な罰則や損害賠償といった重大なリスクを招くことになります。安全で円滑な工事を進めるためにも、アスベスト調査は専門業者へ依頼することをお勧めします。
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