石膏ボードとアスベストの関係性とは？アスベスト事前調査での確認方法や危険性を解説

石膏ボードは、天井や壁に使われる最も身近な建材の一つですが、古い建物ではアスベスト（石綿）が含まれているのではないかと不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、解体やリフォーム等の工事を控えた事業者の方や物件オーナーの方にとって、アスベスト含有の有無は法令に遵守した工事や費用に関わる重要な問題です。

この記事では、実際のアスベスト事前調査では石膏ボードについてどのような調査や判断を行うかご紹介します。

1　石膏ボードとアスベストの関係性とは？

1-1　アスベストが石膏ボードに使われた理由

アスベストが石膏ボードに使用されていた主な理由は、優れた防火性・耐火性・安価である点にあります。

• 防火・耐火性能の向上
  石膏ボードは、建築基準法で定められた不燃材料として広く使用されてきました。アスベストは熱に非常に強く、繊維状であることから補強材としても優秀です。石膏ボードにアスベストを少量混ぜることで、火災発生時の燃えにくさ、つまり耐火性能をさらに高める目的で利用されていました。アスベストが含有された石膏ボードは、不燃性石膏ボードなどとして流通していました。

• コストパフォーマンスと加工の容易さ
  大量生産できる建材である石膏ボードの特性と、アスベストが当時の材料として安価で入手しやすかったことが相まって、コストパフォーマンスの高い建材として広く普及しました。また、カッターやのこぎり等で任意の大きさに容易に加工できることから、学校、病院、オフィスビル、住宅等の壁や天井裏など多岐にわたって使用されてきました。

1-2　アスベスト含有石膏ボードが使われた年代はいつまで？

石膏ボードへのアスベスト使用は1970年代から1980年代後半がピークでした。

法規制の変遷から、2004年以前に製造・出荷された製品にアスベスト含有の可能性があります。

最終的な全面使用禁止は2006年9月1日です。

2006年以前に建てられた建物の解体・改修工事時には、年代だけで判断せず有資格者による調査を実施するか、アスベスト含有建材として扱う（みなし判定）必要があります。

1-3　石膏ボードのアスベスト規制レベル（レベル3）とは？

石膏ボードに含まれるアスベストは、飛散性が比較的低いことから「レベル3建材」に分類されます。

• アスベスト規制レベル分類の概要
  アスベストが含有された建材は、発じん性（飛散のしやすさ）の程度によって以下の3つのレベルに分類されています。
  （引用：建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル）

規制レベル	発じん性	主な建材の例	規制の特徴
レベル1	極めて高い	吹付け石綿、アスベスト含有吹付けロックウール　等	著しく発じん性が高い。 厳重な隔離措置が必須。最も規制が厳しい。
レベル2	高い	アスベスト含有保温材、断熱材、耐火被覆材　等	発じん性が高く、隔離養生が必要な作業
レベル3	比較的低い	石膏ボード、ビニル床タイル、スレート板、Pタイル　等	発じん性が比較的に飛散しにくいとされるが、法規制の対象。

• 石膏ボードがレベル3とされる理由
  石膏ボードは、アスベスト繊維が建材中に固定されているため発じん性の比較的低い「レベル3建材」に該当します。

• 飛散のしにくさ
  通常の使用状態や建材が安定している状態では、アスベスト繊維が空気中に飛散するリスクは比較的低いとされています。
• 例外的な飛散リスク
  解体、破砕、切断、穿孔（穴あけ）といった作業により建材が損傷し、粉じんとして石膏ボードが飛び散ることで、アスベストが飛散するリスクが発生します。

2　アスベスト含有石膏ボードの判断材料

石膏ボードについて、実際の書面・現地調査では主に以下の2点を確認します。

• 防火材料の認定表示による確認
  防火材料の認定表示は、石膏ボードが認定を受けたことを示すもので、アスベスト含有の可能性の高い石膏ボードは以下の製品として（一社）石膏ボード工業会で公表されています。^※

No.	製品	防火材料認定番号	アスベスト 含有量（約）
①	9㎜厚　準不燃石膏吸音ボード	第2006号、第2019号	1重量%
②	9㎜厚　化粧石膏吸音ボード	第2014号、第2010号	1重量%
③	7㎜厚　アスベスト石膏積層板	第1012号	1.5重量%
④	9㎜厚　アスベスト石膏積層板	第1013号	1.5重量%
⑤	9㎜厚　グラスウール石膏積層板	第1014号	1.5重量%
⑥	9㎜厚　不燃石膏積層板	第1004号	1.5重量%
⑦	7㎜厚　準不燃アスベスト石膏積層板	第2008号	1.5重量%
※1	15㎜厚　ガラス繊維網入り石膏ボード	―	4.5重量%
※2	12㎜厚　化粧石膏板（個別認定）	（個）第1425号	1.5重量%

（引用：一般社団法人　石膏ボード工業会）
※2007年時に同団体で集計された資料で、すべての石膏ボードについての資料ではないことに注意する必要があります。認定番号はアスベストの有無を直接証明するものではなく、表示が確認できない場合もあります。

• 新旧JISマークによる確認
  JISマークは製品が規格を満たしていることを示すもので、アスベスト含有を確定する情報ではありません。2005年10月に新マークに切替わり移行期間が3年程あり、アスベストが全面使用禁止となったのが2006年なので旧JISマークの確認は調査の参考材料となります。

図　新旧JISマーク

書面・現地調査でこれらを確認し、アスベスト含有石膏ボードと判定された場合の分析調査は不要ですが、確認できなかった石膏ボードについてはアスベスト含有建材とみなすか専門家による確実な分析調査を実施する必要があります。

まとめ｜石膏ボードの「見分け方」の限界と正確な調査

本記事では、建築物に使用される頻度の多い建材の石膏ボードについてアスベスト事前調査ではどう扱うかを解説しました。

アスベスト含有石膏ボードは発じん性が比較的低い建材ですが、アスベスト含有の判定には適切な書面・現地調査と専門的な分析調査が不可欠です。

アスベスト調査・対策でお困りの際は、当社までお気軽にご相談ください。