建築物等の解体・改修工事を計画されている工事発注者の方や、実際に作業を行う元請事業者の方にとって、アスベスト事前調査は法令遵守の観点から避けては通れない工程です。
調査は2022年の法改正により、大気汚染防止法や石綿障害予防規則に基づき、ほぼすべての工事で義務化されました。
参考記事

本記事では、調査の具体的な実施方法、対象工事の範囲、そして報告・届出手続きまでを網羅的に解説します。
要約
- アスベスト事前調査は、2022年の法改正によりすべての解体・改修工事で義務化され、調査結果の報告は一定規模以上の工事で必須
- 調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が、書面・目視・分析調査の3ステップで行う
- アスベストの発じん性の度合いに応じて、所管の保健所等へ作業実施の届出が必要

1 アスベスト事前調査の具体的な流れと3つの手順
アスベスト事前調査は、厚生労働省・環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」等に基づき、段階的に実施される必要があります。
調査は大きく「書面調査」「目視調査」「分析調査」の3つのステップに分かれており、資格者によって以下の手順で進められます。調査終了後、結果をとりまとめ報告書を作成します。
1-1 ステップ1:書面調査(設計図書等の確認)
書面調査は、現場に入る前の最も重要な初期段階です。
工事対象となる建築物や工作物の設計図書、施工記録、改修履歴、保守点検記録などの資料を確認し、アスベスト含有建材が使用されている箇所の推定を行います。
- 確認する情報
着工時期(アスベスト規制開始前か後か)、建物の構造、使用されている建材の種類(吹付け材、保温材、内装材、外装材など)、過去の改修工事の有無など。 - 目的
資料からアスベスト含有の可能性が高い建材や箇所を特定し、次の目視調査で重点的に確認すべきポイントを絞り込みます。資料から「2006年9月1日以降に着工された建築物等」など「アスベストが使用されていないこと」が明確に判断できる場合は、そこで調査を完了できる可能性もありますが、その根拠を明確に残す必要があります。
1-2 ステップ2:目視調査(現地確認、サンプリング)
書面調査で得られた情報に基づき、資格者が実際に調査対象建物に入り、以下の確認を行います。
- 建材の確認
書面調査で特定されたアスベスト含有の疑わしい建材や、書面調査では確認できなかった建材(ボード裏、配管の保温材、屋根材など)を網羅的に確認します。
また、建材の種類や、劣化状況、使用箇所を図面と照合し、アスベスト含有の可能性を総合的に判断します。高所や設備内部、非破壊で確認できない等の理由で目視調査が困難な箇所についても、記録をします。 - サンプリング候補の選定
目視調査でアスベスト含有の有無が判明しなかった建材について、分析のための試料採取(サンプリング)を行う建材を特定します。
ただし、分析をせずに石綿含有建材と「みなし」て、飛散防止対策を行う場合は分析を行う必要はありません。 - サンプリング
資格者が建材の一部を採取します。この際、養生や湿潤化などの飛散防止対策措置を行います。
1-3 ステップ3:分析調査(分析)
書面目視調査の結果、「アスベスト含有の有無が判明できない」建材について、採取した試料を専門の分析機関に送り、分析を行います。
- 分析方法
JIS A 1481-1をはじめとした公定法に準拠して行われ、試料中のアスベストの種類や含有率(0.1%超が規制対象)を正確に特定します。 - 最終判断
分析結果により、アスベストの有無が確定します。この結果をもって、工事発注者への報告と、その後の適切な飛散防止対策(除去、封じ込め、囲い込み)の計画策定に進みます。

2 事前調査は誰ができる?必要な専門資格とは
アスベスト事前調査は、そのあとの工事の安全対策に直結するため、専門知識と正しい手順が求められます。
2023年10月1日からは、建築物石綿含有建材調査者などの専門資格を持つ者による調査の実施が義務付けられています。
これにより、調査の質の担保と、アスベスト含有建材の見落としによる飛散リスクの防止が図られています。
事前調査を実施できる資格者には、以下の種類があります。
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅・共同住宅の住戸内部に限定)
- 工作物石綿事前調査者(工作物に限定)
- 2023年9月30日までに(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録された者
また分析調査を実施することのできる者は要件として、「適切に分析調査を実施するために必要な知識及び技能を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければならない。」と定められており、具体的には下記の通りとなっております。
- 公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術評価事業」により認定されるAランク若しくはBランクの認定分析技術者又は定性分析に係る合格者
- 一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)」の修了者
- 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」
- 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「アスベスト分析法委員会認定JEMCAインストラクター」
- 一般社団法人日本繊維状物質研究協会が実施する「石綿の分析精度確保に係るクロスチェック事業」により認定される「建築物及び工作物等の建材中の石綿含有の有無及び程度を判定する分析技術」の合格者
(出典:厚生労働省労働基準局「石綿障害予防規則の解説」)
3 事前調査の対象工事範囲と規模
アスベスト事前調査は、建築物や工作物を解体・改修・補修等をするすべての工事で実施が義務付けられています。
詳細は以下の記事でまとめていますのでご参考ください。
参考記事

「アスベスト含有建材が使われていないことが明らかな場合」であっても、その根拠となる図面や記録がない限り、調査自体は必要ですのでご注意ください。

4 事前調査結果の報告・届出義務
調査が完了し、アスベスト含有の有無が確定した後も、発注者や元請事業者には法令に基づく「報告」と「届出」の義務が残ります。
4-1 調査結果の報告が必要な工事
調査は全ての解体等工事に必要ですが、行政への調査結果の報告義務については、工事の規模によって異なります。
沖縄県を含む全国で、以下の規模以上の工事を実施する際は、「石綿事前調査結果報告システム(Gビズシステム)」を通じた報告が必要です。
表 報告の対象となる工事の規模(金額・面積要件)
| 工事の種類 | 報告対象となる工事の規模 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体工事部分の床面積の合計が80m²以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負金額の合計が100万円以上(税込) |
| 特定の工作物の解体・改修工事 | 請負金額の合計が100万円以上(税込) |
元請事業者、特に設備・電気・空調業者の方は、自社の請負工事が100万円未満であっても、元請全体としての工事請負金額が100万円以上となる場合は、調査結果の報告が必要となる点に注意が必要です。また、報告義務がない小規模な工事でも、事前調査の実施と記録の保存は義務となります。
- 報告方法
原則、「石綿含有建材調査結果報告システム(Gビズシステム)」を通じて行います。電子システムが利用できない場合は、紙媒体での報告も可能です。 - 報告期限
工事の開始日前までに報告を完了させる必要があります。 - 報告内容
事前調査を行った建築物の情報、工事の概要、調査者の情報、調査結果(アスベストの有無、使用箇所)などをシステムに入力します。
調査結果の報告は、行政が工事ごとの石綿対策状況を把握し、監視・指導を行うために重要な手続きです。
4-2 作業実施の届出が必要な場合
事前調査の結果、飛散性の高いアスベスト含有建材(レベル1:吹付け石綿、レベル2:石綿含有保温材・断熱材など)が確認された場合、調査結果の報告とは別に、特定粉じん排出等作業実施届出書を所管の保健所等へ提出する必要があります。
- 届出対象
レベル1・2建材の除去、封じ込め、または囲い込み作業 - 届出期限
作業開始日の原則14日前まで - 提出先
工事場所を所管する保健所および労働基準監督署
この届出には、資格者による石綿粉じん対策等を盛り込んだ作業計画の資料を添付し、作業の期間や方法、飛散防止対策などを詳細に明記する必要があります。
4-3 沖縄県の手続きと窓口一覧
沖縄県内の工事に関する手続きは、工事場所によって所管する窓口が異なります。
| 工事場所 | 報告・届出の提出先 (所管窓口) | 報告方法 |
|---|---|---|
| 沖縄県内 | 沖縄県 環境部 環境保全課 北部保健所 生活環境班 中部保健所 環境保全班 南部保健所 環境保全班 那覇市 環境保全課 宮古保健所 生活環境班 八重山保健所 生活環境班 | Gビズシステム、紙媒体にて報告 |
(参考: 沖縄県「アスベスト(石綿)に関する問合せ・相談窓口」)

5 まとめ|正確な事前調査が法令遵守と安全の鍵
アスベスト事前調査は、工事を行うすべての方に課せられた法的な義務であり、有資格者による書面・目視・分析調査の3ステップを経て、正確に行う必要があります。
沖縄県内で工事を行う際は、県が定めた大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアルを参考に、工事規模に応じて行政への報告・届出を確実に履行することが重要です。
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よくある質問(FAQ)


